名刀の産地

時代と共にその完全な各伝の姿というものが一時姿を変える。それがいわゆる新刀というものなんです。伝統が変わってきたかというと、条件が変わってきたことが言えます。名刀ができるには①砂鉄が良くなければならない。②豪族、社寺、とかそういった有力な後援者がいなければだめなんです。それにもうひとつはいろいろな戦乱というようなものがあって、実戦の中で実験し、経験を経て、武器としての刀の性能が試され、その結果生まれ出るというものなんです。新刀という時代は信長から秀吉時代を経て、さらに徳川家康が国を治め世の中が太平になり戦国の動乱が治まる。新しく城下町ができる。全国各地に新興都市というものがたくさんできる。例えば江戸が出来、仙台が出来、備前伝でいえば長船は何百年来の名刀の産地」であった。ところが長船なんて言うところは城下町にはならない。備前の岡山というところに池田が城をもらって城下町を築いた。そうすると、刀鍛冶の本拠地というものも備前の岡山になってしまう。それからもう一つ、交通の便が年ごとに良くなる。陸でも船でも非常に交通が盛んになる。昔は良質の砂鉄を算出するところでなければ仕事のできなかった刀鍛冶でも、必要に応じていい砂鉄を算出するところからいくらでも買えるわけです。